光核!! ガクランジャー

Author:ハナマルゴールド

200X年――ニッポンはエロスの炎で包まれようとしていた
燃えさかる、赤というよりはピンクに近い色彩をもつ炎は、キュウシュウ地方を発端としていまやニッポンを席捲せんという勢いを見せる――
【性帝組】の日本総エロス化計画である

それに立ち向かうのは
【制服戦隊ガクランジャー】
セーラー服型バトルスーツに身を包み、至極ゆるーく活躍中である

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組長東征 4


 
 シンジュク・ニチョウメに怪しい噂がたちはじめたのは、その後すぐのことであった。
 誰かの悲鳴が聞こえた、やら、酔いつぶれているわけでもなさそうなのに街角で眠りこけている人を見た、やら、鳥にしてはやけに大きな羽音をたてて空に舞い上がる何かを見た、やら――。
 
 ニチョウメのバー『THE☆体育会』に来る客も、ときどきそんな話をもたらしはじめた様子である。
 「ANIKI兄貴。最近ここ界隈、ずいぶん妙な感じらしいですな」
 「うん? そお? 荒廃ムッキィ先輩」
 「まあ、こういう町にはいろんな噂話もあるさ」
 「そうすか、大佐? 俺、まだこの町浅いもんで」
 「え、そうなん? 荒廃ムッキィ先輩、すごい馴染んでんじゃん、ココ。すごい長いんかと思ってたな、俺」
 「いや、全然。ちょっと勉強がてらって具合でな。ごく最近なんや」
 「へえ、そうだったんだ」
 ちょっと話の矛先が変わったタイミングで、『THE☆体育会』の扉が開いた。
 「こんばんわ」
 「あ、お客様。いらっしゃいませ〜!!」
 「こちらへどうぞ、おふたりとも」
 来店したのはムッキィにはすでに馴染みとなった客のふたり連れだった。ムッキィはANIKI兄貴をふたりに紹介してやって、覚え始めたシェイカーの腕を披露する支度を始めている。
 
 そしてふたりのお客の口からも、最近ここ界隈で流れる噂話が聞こえてくる。
 噂は噂、と片付けるスタンスを決め込んでいた大佐も、多少の胸騒ぎを覚えなくもない。
 
 ☆★☆★☆
 
 キュウシュウ地方・フクオカのとある町に、とある研究施設があった。
 見た目は普通の民家なのだが、近隣住民たちはここの窓から時折強い光が閃いたり、どことなく甘い香りのする煙があがったりするのを日常的に目撃していた。
 ここを守る研究者はひとりの男。
 GOGO!! の波動と日々戦うかたわら、暇つぶしにと世界平和を考える人物である。
 七三分けの髪型の、おだやかな表情を崩さない男の名は――《トッチ博士》。
 深夜の研究施設からは、今はミシンの作動音と覚しきカタカタ音が外に漏れている。 
 
 『ドクデンパ ジュシンチュウ――ドクデンパ ジュシンチュウ』
 「おや? こんな時間に?」
 トッチ博士は無造作に放ってあった携帯電話を手に取った。
 「もしもし、トッチ博士ですが」
 博士の通話相手は――これまた博士である。
 『もっしぃ〜、トッチ博士!! 元気、元気ぃ〜?』
 「ごく普通ですな。ななせ博士は、相変わらず?」
 『もちろん毎日萌えてます。うふ』
 
 トッチ博士とななせ博士のふたりは、かつて同じ釜の飯を食った仲の、いわば同胞だ。
 ともに壮大な計画の研究チームに所属していたのだが、その計画があまりに危険だったために志半ばにしてチーム解散の憂き目にあった。
 それ以来、どちらも『さすらいのキケン寄り科学者』として生きてきた。
 そして現在、ふたりは再び手を取りあったのだ。
 エロスの炎に立ち向かう装備を開発する、という計画のもとに、日夜研究をしていた。
 
 『そっち、どうですか?』
 「バトルスーツですな? いろいろ実験してますよ。今も試作品を縫っていたところなんで。ななせ博士はどうです?」
 『わりと順調ですよ〜、試験的にビームの出る武器なんか作ってみたりして』
 「それはいいですな」
 『バトルスーツ、あとで写真送ってくださいね。うふっ』
 
 雇い主が誰なのだか、本人たちも正確には知らなかった。
 とはいえ、自ら納得して受けた仕事の依頼だったので、ふたりは共闘している。
 トッチ博士は変身メカニズムとバトルスーツの開発が、ななせ博士は毒電波式携帯電話と武器の開発がそれぞれの任務だった。
 
 それからしばらくふたりは研究談義に花を咲かせていた。
 電話を切ったあと、トッチ博士は喉の渇きを覚えて外に出る。
 行きつけのスナックでカラオケでも――という思いに駆られたらしい。
 夜風がトッチ博士の七三分けの前髪をはらりと揺らしていた。
 
 ☆★☆★☆
 
 そのころカブキチョウでは、性帝組まぬザー組長と幹部ふたりが女子を囲んでいた。
 女子を交えて話をするということで、さすがに風俗店ではなくチェーン展開の居酒屋が今夜の会議室であった。
 「連絡ありがと、組長さん」
 若さあふれる肌つやの女子は、向かいに座った組長にぺこりと頭を下げる。
 「いや、こっちこそ。来てもらっちゃって悪いね〜!!!」
 「ううん。だって、なんか楽しそうだったから」
 「頼もしいこと言ってくれるね、rurinnkoちゃん。そしたら盃、交わしちゃう?」
 頷いたrurinnkoとまぬザー組長は乾杯をする。続けてふたりの幹部とも。
 「それで、我々の計画は理解してもらえたのかねぇ、rurinnkoちゃん?」
 ヒットマン・Jが問いかけるのに、女子――rurinnkoはにこりと笑んだ。
 「ええ、J兄さん。それなりに理解したつもり」
 全女性風俗化を狙うヒットマン・Jは、独特の嗅覚でrurinnkoを捉えていた。
 手渡されたマッチの持つ意味もそれなりにわかってもいたのだが、あえてここは仲間として迎えよう、と組長を説き伏せたのだ。
 
 「さすがスカウトマンだけあるね、ヒットマン・J」
 すでにやる気の表情を見せるrurinnkoを見て、ロリップリンも感心していた。
 「こんなにレスポンスのいいお嬢さんがいるとはね」
 「褒めてくれてありがと、ロリップリン兄さん」
 「あら――ロリップリン兄さんって呼んでくれるんだ、rurinnko嬢。そしたら、妹って呼んでもいいかな?」
 「ええ、ロリップリン兄さん。好きにしてもらっていいわ。何だったらセーラー服でも着てこようか?」
 「え――いや、それだけは勘弁してください、セーラー服だけは勘弁してください!! もうホントごめんなさい」
 何かを思い出したように、ロリップリンはおびえていた。
 
 ☆★☆★☆
 
 すでに明け方近くの時間。
 最後まで残って店の仕事をようやく片付けた荒廃ムッキィは、町の夜色が薄くなっていくのを眼を細めて見守っていた。
 「今日も組長からの連絡はなかったな」
 もしも明日も連絡がなかったら、畏れ多いながらも自分からコンタクトをとってみようか。それとももうちょっと待ってみようか――
 見た目はがっちりしているが、心の中はナイーヴな荒廃ムッキィなのである。
 
 住まいに戻るべく足を進めている最中のこと。彼のポケットから振動が伝わってきた。
 マナーモードにしたままだった携帯電話のバイブレーションであった。
 「もしや――組長?」
 思った彼であったが、ディスプレイに表示されたのは別の名前だった。
 「はい、こちら荒廃ムッキィ」
 『おはよう、ロリタミモッコリンだよ。こんな朝早くにごめ〜ん。なんか目が醒めちゃってさ。最近どう? 侵略活動、うまくいってる?』
 同じ怪人仲間の声を聞いて、荒廃ムッキィはすこしだけ元気になった気がした。


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